カナイ樹美 Pâte de verre / パート・ド・ヴェール
Having its roots in Roman-period glassblowing, pate de verre is an ancient method of glassforming that has since been revived among modern glass casting techniques.Literally translated, pate de verre means glass paste in French.As suggested by the name, this method makes use of finely crushed glass.The powdered glass is applied to a mold, and as the temperature is raised the glass is cast into its shape.In my works, the texture of an original earthen sculpture is transferred to the glass after firing in the kiln.In the texture of the glass, one can perceive the vestiges of my feelings poured into each stage of the works creation. ( by kimi Kanai )
『パート・ド・ヴェール』は、実に自由で、表現の可能性を未知数に秘めたガラス技法ではないかと思います。作り手が違えば、またその質感もガラリと変わり、それらが同じ原料で作られていることを不思議に思う方がいるかもしれません。それは、この技法で作るガラスの工程の多さに起因しています。先ず何かしら別の材料(大かた、粘土ですが)で器なり、彫刻なりを作り(原型といいます)、その後 の工程(型取りや焼成、研磨ets)を経てガラス作品にまでもっていくのですが要は その工程の中で作家が個々に汗と涙の研究成果を『ガラス』というマテリアルに投入することで現れた結果が『表現のバリエーション』ということかと思います。
自然の造形物は、何故そのように美しいのか・・ということを考えるとき やはりその色、質感、形には、そうあるべき必然の働きがあり成り立っているからということがあると思うのですが、自分がガラスを作る場合にもそうした必然の積み重ねによって『物』は存在してくるということを経験します。ガラスになる前段階において粘土などで自由に造形したとしても、いざガラスにする場合は熱や重力、圧力など自然の力学が働き、自分にとっては思いもよらぬ結果になることが多々あり、気づかなかった自然の原理をその結果の中で知ることになります。またその逆に上手く思い通りになった時は、何か自分の想像や行為が自然に添ったことであったような安堵感にも似た感覚を得ることもあり、長く造形に関わっているうちに自己の表現などという事とは違う、『自然に習う』ような そんな行為へと私の『物作り』が変化しているのを感じるこの頃です。(カナイ樹美)